2011年2月28日月曜日

DSDマスタリング(その4)「肝となるアナログケーブルの選択」


チーフ・エンジニアの森崎です。
サンレコ誌主宰の「Sound & Recording Magazine presents Premium Studio Live」などでDSDレコーディングの音の良さはご存知ですね。「DSDレコーディング」は演奏の空気感、リアリティーがそのまま録音出来ます。アーティストの細かなニュアンスをありのままに録ることが出来る。サウンドはナチュラルで立ち上がりが速く艶があります。

録音、MIXをPCMで行っている場合でも、DSDマスタリングのサウンドは強力に良いというのを知ってもらいたい!本日はDSDマスタリングの音作りについて。

CD用マスタリングでの「DSDマスタリング」とはマスタリング時のプレイバックをDSDで行うマスタリングのことを指します。TDマスターが初めからDSDの場合はもちろん、48/24などのPCMの時もKORG AudioGateでPCM→DSDアップコンバートを行いKORG MR-2000Sで再生します。

しかし、ただMR-2000SでプレイバックするだけではDSDの良さを表現することは出来ません。MR-2000Sにしっかりと振動対策を施し、アナログ機材やラインケーブル、電源ケーブルを駆使してプレイバックする際に音作りの土台をしっかり築き、ジャンルにあった調整を行うことでDSDの良さを最大限に活かしたDSDマスタリングが可能です。

KORG MR-2000SはDSD/Analogコンバーターを内蔵していて、アウトはキャノンまたはピンのアナログです。そのアナログアウトのケーブルの選択がDSDマスタリングでは肝になります。これまでのPCMマスタリングでは低域を豊かに表現するためにトランスペアレント MUSICLINK Superを基本に作業していたのに対し、DSDはローエンド/ハイエンドが十分に伸びているサウンドなので、100Hz〜4kHz前後、キック/スネア/ヴォーカルの芯が出るアクロテック8Nケーブルを使用。電源ケーブルはセンター成分がしっかり出るアレグロケーブルを使用しています。センター成分をしっかり出すことで大型のオーディオシステムだけではなく、ヘッドフォンやPCのスピーカーなど口径の小さなシステムで聴いてもパンチのある音作りがDSDマスタリングでも可能になります。

(1)中低域の厚み(2)音像の大きさ(3)艶のある倍音(4)センター成分をしっかり出す、というアナログ的なサウンドと(5)ナチュラルで立ち上がりが速い、DSDのサウンドが両立した仕上がりを聴いていただくことが出来ます。それが僕のDSDマスタリングです。


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2011年2月24日木曜日

プリセットの有効活用とさらにサウンドを追い込む

チーフ・エンジニアの森崎です。
本日はデジタル機材/プラグインのプリセットを活用するポイントです。
僕は機材のプリセットを積極的に使います。僕の場合TC Electronic System 6000やADC/DACなどで。新しい機材を使うときまずはプリセットを切り替えて音を聴き比べます。プリセットはその機材の一押しのセッティングがメモリーされているので自分でゼロから音作りするよりも効果的です。

次にそこからさらにサウンドを追い込みます。パラメーターを動かして良いサウンドだと思ったら録音してみる。録音したサウンドはオリジナルとAB比較視聴しましょう。(「サウンド・キャラクターを見極める5つのポイント」参照)デジタル機材・プラグインはセッティングをメモリー出来るのでお気に入りのセッティングはどんどん保存していきます。

その際パラメーターと音質を詳細にノートなどに書き出します。120Hzを上げたらキックがどのように変化した、アタックタイムを遅くしたら音が太くなった、など。ノートを参照しながら音を聴いてみると徐々にそのパラメーターの意味を理解出来ます。

デジタル機材の使いこなしで大切なのはパラメーターの数字にとらわれず、出音を第一に考えること。パラメーターのフィーリングは機材ごとに違います。例えば機材Aでアタックタイムを30msにしたときのニュアンスが、機材Bでは50msにしないと得られないことはよくあります。サンプリング周波数やビット数の違いでかかり具合が変わることもあります。

音作りのときはパラメーターの数字ではなく自分の耳を信じてスピーカーに耳を傾けて音作りしてみて下さい。


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2011年2月22日火曜日

サウンド・キャラクターを見極める5つのポイント

チーフ・エンジニアの森崎です。
このところ「ラインケーブル・ADコンバーター視聴」の記事を多くアップしましたが、お持ちの機材をリスニングされた方はいますか?本日は、これからトライする方にも役立つ機材・ケーブルの聴き比べでそのサウンド・キャラクターを見極めるための5つのポイントを紹介します。
[ サウンド・キャラクターを見極める5つのポイント ]
1. 客観的に。
2. ポイントを絞って。
3. 聴きどころのテーマを決める。
4. リスニングポイントは同じ位置で。ボリュームも固定。
5. 一度に比べる機材やケーブルはまず2種類から。

1. 機材やケーブルなどの「キャラクター」「質感」を聴くので必ず客観的に聴きます。音楽鑑賞を楽しんでしまってはその判断は出来ません。ただしマスタリングの作業では音楽的要素も加味した客観的判断が必要です。

2. フレーズが短い方が音質を記憶しやすいため視聴箇所はポイントを絞ります。曲頭のキック1発や最初のヴォーカルのワンフレーズなど。僕のマスタリングはTC Electronic System6000内で3台分のEQを使用するので、細かく多くのポイントでEQするには特に素早い判断が必要なんです。

3. ヴォーカル、キックの質感、キックとベースのバランス、オケとヴォーカルのバランス、広がり、奥行き、フォーカス、定位、空気感、音像の大きさ等、テーマを決めて視聴します。

4. リスニングポイントは前後、左右、高さがなるべく変わらぬよう視聴します。モニター音量でも聴こえ方はガラリと変わるのでボリュームは必ず固定で行います。

5. 比較視聴の基本は2種でのAB比較です。新たにCを比べる場合はA、Bの良かった方とCを比較します。

機材・ケーブルの音色の違いはわずかですが、その積み重ねが最終的な音の仕上がりを大きく左右します。この視聴を行う際はモニター周りの見直しも併せて行うことをお忘れなく!モニター改善策についてはこちらもお読みください。僕はここで紹介した方法でスタジオの機材・ケーブルは徹底的に視聴してサウンドキャラクターを把握しているので、その組み合わせでアーティストの求める音に積極的に反映させることが出来ます。それによりその後のEQなどがさらに活きてきます。ぜひ立ち会いマスタリングで体験してください!


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2011年2月21日月曜日

サイデラ・マスタリングのモニターシステム構築論

チーフ・エンジニアの森崎です。
先日は”音の朝活”サイデラ・モーニングセッションで「ラインケーブル・ADコンバーター徹底視聴」を行いました。細かなサウンドの違いへのこだわりの積み重ねが最終仕上がりを大きく左右することを参加いただいた方に体感してもらいました。マスタリングで「細かなサウンドの違い」を正しく聴き分けるには「解像度の高い、色付けのないモニター」が必須です。
本日はサイデラ・マスタリングの徹底したモニター環境のポイントをいくつか解説します。

[ スピーカーセッティング ]
スピーカーはしっかりした台に置き、左右の角度やリスニングポイントからの距離はミリ単位で調整します。ポイントとなる低域の調整は鉛板などでの振動対策とインターロッキングによる拡散で行なっています。部屋全体の響きは吸音というよりも調音に近い。SONEXとグラスウールを定在波のある場所に貼り、試聴を繰り返しながら微調整しました。 吸音しすぎていないのでロスがなく小さなワット数でもかなりのモニターレベルを出すことが出来ます。スタジオはスピーカー両側には十分な広さと天井高も4.4メートルあるので奥行きと広がりのあるモニターを実現しています。

[ 機材セッティング ]
機材のセッティングのポイントは振動対策と放熱です。機材はTAOCのボード、フラワーボード、檜の集成材、厚手のシナ合板などの上に置いています。ラックマウントの機材はネジの種類と締め方にこだわっています(すぐに出来る音質アップの2つの方法(機材の設置 基礎編)参照)。低域に暖かみと厚みをプラスするため多くの機材は木材の上に置き、もちろん部分的に金属のインシュレーターを使用してレンジとバランスを調整します。放熱を良くするため機材は出来るだけスペースを空けて設置すること。特に必要な場所には扇風機を取り付け空気の流れを良くしています。機材は熱を持ちすぎると音がだれて来るのでしっかり対策する必要があります。

[ ケーブルの選択 ]
モニターラインのラインケーブルにはSaidera Ai SD-9003、電源ケーブルはACROTECの製品をリファレンスにしています。その選択の基準は「色づけがなく、レンジが広く、立ち上がりの速いケーブル」です。

モニター環境の調整は(1)最初にルームアコースティックの調整、(2)それから機材のセッティング/調整、(3)最後にケーブルの選択という順序で行ないます。聴き慣れたリファレンスCDの音を基準にルームアコースティックの調整、その他全ての機材の調整を行ないます。時間はかかりますが正しいモニター環境を作るにはこの方法が一番近道です。


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2011年2月18日金曜日

DSDマスタリング(その3)「歪みの少ない透明感のある声、槇原敬之/林檎の花」

チーフ・エンジニアの森崎です。
JR東日本東北新幹線の新青森駅開業のCMですでにみなさんお馴染みの、槇原敬之さんニューシングル「林檎の花」のTD音源はKORG MR-2000Sで録音された5.6MHzDSDデータでした。最近はWAVなどのPCMデータをKORG AudioGateでDSDデータにアップコンバートして作業する「DSDマスタリング」の手法を多くとっていますが、やはりDSDレコーダーにダイレクトにTDされたサウンドは違う!優しく暖かみがあり抜けてくるヴォーカル。エンジニアTさんに質問したところ、
「MR-2000SにTDするようになってから、EQをほとんど使わなくなりました。PCMに落とす時は声の抜けを良くしたり、輪郭をつけるためのEQをかけていましたが、DSDは高域をEQしなくても抜けるのでどんどんシンプルな処理になっています。」
「音の透明感が違うのでリバーブのかけ具合も変わりました。」
とのこと!PCMの場合DAW上でのバウンスやマスターレコーダーへのハイサンプリング録音でも音質が若干変化しますが、MR-2000Sに録音すると録音前と後で音のニュアンスがほとんど変わりません。MR-2000Sのインプットスルーを聴きながらTD作業をすればエンジニアのイメージしたサウンドに限りなく近く仕上げることが可能。これがDSDが他のフォーマットに比べより音楽的に仕上がる要因のひとつです。

今作のDSDマスタリングではEQ、COMPを施す前に音の土台作りをしっかり行ないました。まずエンジニアTさんがTD時に聴いていたサウンドを再現するために録音に使用したワードクロックROSENDAHL Nanoclocksを再生時にも使用し、これにより低域の厚み、高域のレンジが増しピラミッド型のバランスの良いサウンドになりました。さらに声の輪郭、存在感を出すためにアレグロの電源ケーブルを使用。(DSDマスタリング(その1)「透明感のあるアナログサウンド」を参照)このケーブルを使うと音像が大きくヴォーカル、キック、スネアなどモノの楽器が前に出て来ます。

EQは補正程度に。ヴォーカルの芯を出すために1kHzを1.4dBプラスしました。まさに「高域をEQしなくて済む」のでより歪みの少ないクリアーで透明感のある声に仕上げられます。COMPはレシオ1.6:1、アタックタイム50ms、リリースタイム300msでごく浅くかけました。アタックタイムを遅めにしてヴォーカルではなくキックに反応させリズムをタイトに仕上げています。

サウンドは2011年3月11日(金)発売のCDで、ぜひ確認してみて下さい。


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『クラーク志織 7人の音楽評論家の肖像展』

2月19日(土)より弊社1Fではじまる展示のお知らせをいたします。
お誘い合わせの上、ぜひお立ち寄りください。

新進気鋭の画家クラーク志織が、第一線で活躍する7人の音楽評論家に会いに行き、肖像画を描きました。カラフルでPOP、愉快にみえる世界の中にどことなく哀愁がにじみ出ているのはなぜでしょう?肖像画に添えられるそれぞれの「音楽評論とは何か?」のコメントにその答えはあるかもしれません。



『クラーク志織 7人の音楽評論家の肖像展』
〜音楽を言葉にする人々を絵にしました〜 

7名の音楽評論家


青木和富 
今井智子
小沼純一
佐藤英輔
高橋健太郎
松山晋也
増渕 英紀
(50音順/敬称略)

画家クラーク志織が描く 7名の音楽評論家の肖像をそれぞれの「音楽評論とは何か?」の
一言を添えて展示します。

クラーク志織プロフィール
Time Out Tokyo記事
TOKYO WARDROBE記事


期間:2月19日(土)〜 28日(月) 10:00〜18:00
オープニングパーティー 2月19日(土) 18:00〜20:00

19日は12:00〜20:00、20日は16:00〜20:00、この2日間は作家本人も会場におります。
26日、27日はお休みとなります。

入場無料
MAPはこちら

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2011年2月17日木曜日

自宅マスタリングのヒント

チーフエンジニアの森崎です。

本日は自宅マスタリングのヒントについて。「秘伝マスタリングテクニック極秘公開」(2011年1月27日Rock oNセミナー)でも解説したように、僕のマスタリングには大きく3つのプロセスがあります。(セミナーで使用した資料のPDFはこちらでダウンロード出来ます。→PDFダウンロードLINK→→

1.サウンドのキャラクター、ニュアンスを決定する。
2.必要なレベルまで歪まないように音量を入れる。
3.細かなバランス調整。

マスタリングでのサウンドキャラクター付けはアナログ機材、AD、DAコンバーターの選択、ケーブルの選択などで行ないます。レベルを大きくするに最終的にピークが点かないようTC Electronic SYSTEM6000のMD3がBrick Wall Limiterを少しかけています。細かなバランス調整はGML Model8200(アナログEQ)又はMDW HiRes Parametric EQ(デジタルEQ)がお気に入りです。

同じようなことプラグインでのマスタリング作業に応用する方法は?
1.パラメーターをフラットにしても通すだけでサウンドキャラクターが加わるプラグインをインサートします。例えばPultec Bundle EQやJOEMEEKなど。これはあくまで、インサートすることでプラグインの持つ独自のサウンドキャラクターを付けのため。色々なプラグインを聴き比べましょう。

2.レベルを入れるリミッターはWAVES L1、L2、 Digidesign Maxim、McDSP ML4000など、使いやすい、音質が気に入っているプラグインを選びましょう。ただし過度なリミッティングは禁物。インプットレベルをよく監視してください。

3.細かなバランス調整はどの帯域を操作しているのか視覚的に分かるEQがオススメです。もちろん音質を優先してそうでないものを選んでもかまいません。僕はEQのカーブがきれいにつながるようにデジタルEQをSystem6000内で3台、シリーズで使います。そしていつも良く使う周波数、Q、レベル設定をジャンル別に20種類程メモリーしています。このメモリーを呼び出し聴き比べながら音作りをすればゼロから作り上げるよりも作業がスピーディーで、ジャンルに合った適切な音処理が可能です。セッティングのストアとリコールはプラグインがもっとも得意とすることの一つですね!


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2011年2月16日水曜日

サイデラ・モーニングセッション#034が終了しました「アンコール開催!マスタリングセミナー -ラインケーブル・ADコンバーター徹底視聴-」

どうもMUSHです!
サイデラ・モーニングセッション#033「アンコール開催!マスタリングセミナー -ラインケーブル・ADコンバーター徹底視聴-」が終了しましたよ!
視聴したのはこちらの機材。今回の視聴で、各ケーブル・コンバーターのサウンドキャラクターの違いはもちろん、サイデラ・マスタリングのモニター環境へのこだわりもわかっていただけたのではないでしょうか!
参加いただけなかった方も、先行レビューのBlog記事をぜひご覧くださいね!
[ AD Converter ]
dB Technologies 4496
Prism Sound Dream ADA-8
dCS 905

[ Analog Cable ]
Wire World Siver Eclipse
Transparent MUSICLINK SUPER


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2011年2月14日月曜日

Wire World Siver Eclipse / Transparent MUSICLINK SUPER:ラインケーブル・ADC徹底視聴予習編(その4)

チーフ・エンジニアの森崎です。
2月15日のサイデラ・モーニングセッション#034「アンコール開催!マスタリングセミナー -ラインケーブル・ADコンバーター徹底視聴-」で視聴するものを、シリーズでレビューします。(その4)はお気に入りのケーブルについて。


[ Wire World / Silver Eclipse ]
ワイヤーワールドはオーナーでケーブルの設計者でもあるデヴィット・ザルツ氏を中心に、ケーブルの作成において次々に革新的技術に取り組んでいるアメリカのケーブルブランド。デビッド氏は「ノーコンタクト」「ノーカラーレーション」をゴールとして掲げ、それに向かってケーブルを作り続けている。1992年にワイヤーワールド社を立ち上げ以来、オーディオインターコネクトケーブル、スピーカーケーブル、デジタルケーブル、USBケーブル等多、岐にわたり様々なハイクオリティーケーブルを作り出している。(カタログより抜粋)

ワイヤーワールドのサウンドは明るく透明感があり音像の大きなヴォーカルが特徴。声の細かなニュアンス、倍音まではっきり聴こえる。オケとヴォーカルのバランスは4:6ぐらい。アーティストの声のニュアンスを出来るだけ変えずに暖かみ、輪郭のある声にしてくれるケーブルです。ほんの少し高域8k〜10kHzが持ち上がるので音に艶がプラスされます。レンジが広く空気感があるのでアコースティックギターやピアノとの相性も抜群です。ご存知スターリング・サウンドのグレッグ・カルビも愛用しているケーブルです。

[ Transparent / MUSICLINK SUPER ]
トランスペアレントは1980年設立。トランスペアレント・オーディオケーブルに搭載された独自のネットワークは、ノイズ低減に作用するばかりか、その共振点を中音域に害を与えない60〜15Hz程度の超低域にまで追いやる効果をあわせもちます。ケーブル、ネットワークの物理的な防振対策とあいまって、この電気的制振効果はケーブルから特異な色付けを取り去り、リアリティー豊かな深い音楽性を引き出します。(カタログより抜粋)

トランスペアレントのサウンドはボリューム感のある低音とキレのある高域が特徴。特にキックが弾力があり音像が大きく表現されるのでR&BやHIP HOP、クラブミュージックには欠かせないケーブル。低域は量感はあるがしっかり止まるのでサウンドはドライです。使いこなしが難しいケーブルですが音楽のグルーヴ、躍動感を余すことなく引き出してくれるケーブル。ゲートウェイ・スタジオのボブ・ラドウィッグ氏が愛用しているケーブルです。

PS.
オーディオのエンジニアもレコーディング、マスタリング・エンジニアも一番大切なことは「アーティストの意図しているサウンドをどれだけリスナーに伝えられるか」ですね。

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2011年2月11日金曜日

dCS 905 AD Converter:ラインケーブル・ADC徹底視聴予習編(その3)

チーフ・エンジニアの森崎です。
2月15日のサイデラ・モーニングセッション#034「アンコール開催!マスタリングセミナー -ラインケーブル・ADコンバーター徹底視聴-」で視聴するものを、シリーズでレビューします。(その3)はdCS 905 AD Converter。
・32kHz〜384kHz、16bit/24bitのワードレングスで動作する2ch ADコンバーター。
・Sony DSDフォーマット(DSD2.8MHz)もサポート。
・DSD信号を44.1kHz/16bitのAES信号として8トラックレコーダーに記録することができるDSD4機能、44.1kHz/24bitで6トラックに記録できるP3D機能が搭載。(DSD対応レコーダーを用いなくてもDSDレコーディングが可能)

dCSの開発理念は演奏した音楽をそのまま聴き手の眼前に再現することです。レコーディングエンジニア、マスタリングエンジニアたちは 思い描いた情報を、能う限り精密に、メディアに注ぎ込むことに最大限の神経を使っています。アーティストの心血注いだ作品を、そのまま再生することがdCSの製品哲学であり、使命である、と考えております。(カタログより抜粋)

これは僕のマスタリングのポリシーとも同じ!この開発理念で作られた機材ですが現在はディスコンになってしまいました。

そのサウンドはステージの広がり奥行き、静寂の中から音が立ち上がった時の緊張感が分かります。ダイナミックレンジが広く低域が豊かでしなやか。SNがとても良い。よってアーティストの気配まで感じることが出来ます。dB Technologies4496は演奏のグルーヴをダイレクトに聴かせるコンバータなのに対し、dCS 905はステージで演奏しているアーティストの姿が見えるようなリアリティーがあります。ナチュラルで空気感のある音で、コーラスを重ねたヴォーカルものやストリングスやシンセを活かしたアレンジの曲に使っています。ヴォーカルはふわっと広がる倍音が魅力。キックはアタック感より音量感のあるサウンド。リズムはPrism Sound Dream ADA-8のように全面的に押し出してくる感じではないが、立ち上がりが速くボリューム感があります。

このコンバーターが特に合うのはライヴ音源。その空間の広さ、部屋の材質までも聴き取ることが出来るサウンドです。音のリアリティーを表現したいとき楽器の質感、ギターやバイオリンだったら木の質感、トランペットやシンバルなら金属の質感を表現することはとても大切で、その表現力に長けたコンバーターです。


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2011年2月10日木曜日

Prism Sound Dream ADA-8:ラインケーブル・ADC徹底視聴予習編(その2)

チーフ・エンジニアの森崎です。
2月15日のサイデラ・モーニングセッション#034「アンコール開催!マスタリングセミナー -ラインケーブル・ADコンバーター徹底視聴-」で視聴するものを、シリーズでレビューします。(その2)はPrism Sound ADA-8 Multi-channel A/D D/A Converter。
24BIt/96kHz対応の8ch AD/DAコンバーター
・AES3(1&2ワイアー対応)、TDIF、ADATオプティカル、SDIF、Sonic Solutions、DIGIDESIGN Pro Toolsなど、モジュールの交換で様々なインターフェースに柔軟に対応。
・さらにSDIF-2モジュール、SDIF-3インタフェースでDSDにも対応。
・8チャンネルのPCM-DSD変換、DSD-PCM変換。
・「スーパー・ノイズ・シェイピング」、「ダイナミック・レンジ・エンハンスメント」、「ワード・マッピング」、「サンプル・レート・アップ・コンバート」などのD/D機能も装備。
・アナログ入力段にオーバーキラー回路(ソフトクリッピングリミッター)を搭載。急激なオーバーロードでもデジタル・クリップしない。

モジュールは2つのパスを持ちそれぞれ独立設定、8ch×2回路の入出力を異なるフォーマット間で行える。各ルーティングはMimic Panelのパススイッチで切り替え可能。ブロックごとの青いボタンでパラメーターの変更できる。リファレンスレベルは0.5dBステップで調整可能。フロントパネルはモニター、ルーティング、メーター、プリセットのセクションに分かれマニュアルを見なくても直感的に操作出来る。
発売当初、Pro Toolsに24Bitでダイレクト接続できるコンバーターとして大反響でした。NYCのスターリングサウンドではほとんどのエンジニアがプリズムサウンドのAD-2を使っていました。そしてサイデラ・マスタリングでもこのコンバーターを採用。初めて音を聴いた瞬間から、洋楽独特の音の厚み、切れ、透明感がある。全体域に渡ってフラットで厚みがありピークはほとんどない。ヴォーカルはオケに馴染み中低域に厚みがあるピラミッド型のボトムがしっかり支えるサウンド。特にかっこいいのがドラムの音。音像が大きくバシッと止まる。EQでローカットをしなくて良いのにはビックリです。dB Technologies 4496はベース中心のバランスだが、こちらはドラム中心のバランスと言えます。高域もトップエンドまできれいに伸びて倍音がとてもきれい。

僕はこのコンバーターをリファレンスとして使っています。その理由はあらゆる環境で聴いても音楽のバランスが崩れない、特にヴォーカルの質感が変わりにくいため。音像が大きく、パンチがあり、音が前に出て来るので最近のJ-POP、R&B、HIP HOPには欠かせない機材です。レンジの広さと音の厚みを兼ね備えた数少ないコンバーターです。


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2011年2月9日水曜日

dB Technologies4496 SYSTEM:ラインケーブル・ADC徹底視聴予習編(その1)

チーフ・エンジニアの森崎です。
今回より、2月15日のサイデラ・モーニングセッション#034「アンコール開催!マスタリングセミナー -ラインケーブル・ADコンバーター徹底視聴-」で視聴するものを、シリーズでレビューします。(その1)はdB Technologies dB4496SYSTEM(現 LAVRY Engineering LE4496)。
dB4496SYSTEMは、1Uのラックマウントシステムです。DAC、ADC、サンプルレートコンバーター、マイクプリアンプの自由な組み合わせが可能。ハードウエアは、32-100kHzのバリスピードモードを含む44.1、48、88.2、96kHzサンプリング周波数に対応しています。

[4496フレーム(シャーシ)]
90-240VAC対応の電源(出力電源ノイズフィルター内蔵)と2chユニットを4モジュール挿入可能なスペースで構成されています。dB4496はモジュールM・DA-824(2ch DAコンバーター)、M・AD-824(2ch ADコンバーター)、M・BY2(アップサンプル/ダウンサンプル・コンバーター)、M.PREAMP(2chマイクプリアンプ)、を様々に組み合わせる事が出来ます。

[M・DA-824(2ch DAコンバーター)]
サンプリング周波数44.1kHz〜96kHz、24Bit対応。クロックモードはWide Lock(バリスピード対応)、Narrow Lock(固定レート)、Crystal Lockの選択が可能。Crystal Lockは入力時のデジタル信号からほとんどのジッターを排除出来る高性能なクロックです。

[M・AD-824(2ch ADコンバーター)]
サンプリング周波数44.1kHz〜96kHz、24Bit対応。それぞれのユニットを同じパラメータに設定するマスターモードと、それぞれ独立した設定が出来るスレーブモードがあります。その他ADコンバーターを強くドライブするAnalog soft saturation(歪まずにピークを丸める処理)とテープサチュレーションをエミュレーションしたDigital soft saturation機能もあります。

サイデラ・マスタリングでは1.DAC8ch 2.DAC8ch 3.ADC6ch+サンプリングレートコンバーターの3ユニット所有しています。サウンドは暖かみ、艶、アナログ感があります。木綿の肌ざわりのような心地いい風合いがプラスされます。4kHz~8kHzあたりがほんの少し持ち上がるので、声の輪郭がはっきりして、歌詞がしっかり聴こえます。また、ギターのエッジ感がとても心地いいですね。中低域に厚みのあるチューブアンプの質感もバッチリ表現してくれます。ジャズではサックスやトランペットのブレス、指使いなど細かなニュアンスまでリアルに表現出来ますね。オケとボーカルのバランスはボーカル寄り。リズムのバランスはキックよりもベース中心です。曲によっては低域の特定の周波数が盛り上がるので注意が必要です。
音場感、広がりより演奏のグルーヴをダイレクトに音楽的に聴かせるコンバーターです。

青いフロントパネルが印象的な4496ですが、dB Technologies(Lavry Engineering)のADC/DACには4496のBlueの他、Gold/Blackのシリーズがあり、NYのStarling Soundはじめ多くのスタジオで使用されています。サイデラ・マスタリングのモニター用DAコンバーターもGoldのDA-924です。Lavry EngineeringのHPに「Saidera Mastering」しっかり名を連ねています。→→こちら
THE "LavryBlue" Conversion System


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2011年2月8日火曜日

YAMAHA NS-10Mの時代

チーフ・エンジニアの森崎です。
本日はYAMAHA NS-10Mについて。音響ハウス時代の思い出を少し…。
YAMAHA NS-10Mはレコーディング・スタジオで一番有名なモニタースピーカー。(写真は改良型のNS-10M STUDIO)耐入力は50Wしかないのにドライブするパワーアンプの定番AmcronPSA-2の出力は150Wもある。もっと小さいアンプでも十分鳴らせますが、レコーディングエンジニアが求めているのは音の瞬発力。キックがドン、と鳴った時にスピーカーもドンって来ないといけない。車なら軽自動車と排気量の大きな車の加速の違い、アクセルを踏んだときに瞬時に反応してくれるそのフィーリングです。

NS-10Mの周波数特性は60〜20,000Hz、クロスオーバー 2,000Hzなのでちょっとピークのある音を入力したり、一つの帯域で、特に高域をEQしすぎるとツイーターがとんでしまう。このようなセッティングのモニターシステムの使いこなしはとても難しい。NS-10Mをバランスよく大音量で鳴らすには経験とノウハウが必要なのです。このスピーカーを鳴らすことが出来れば一人前です。

当時NS-10Mのスピーカーユニットは消耗品と考えられていて、音がへたればすぐに新品のユニットに交換。だから交換用のユニットのストックは充分にありました。スピーカーユニットを交換すると音のキャラクターが変わる。エイジングをして馴染みを出してからセッションで使用しますが、それでもバックアップ用のNS-10Mが2、3ペアは待機してました。エンジニアも2STの音、6Stの音というようにスタジオごと、モニターシステムの特徴を完璧に熟知していました。この経験を通して「モニターシステムの特徴を理解することこそエンジニアに必要不可欠である」ことを学びました。

NS-10Mの一番の魅力は明るく元気のあるサウンド。ミュージシャンがコントロールルームでプレイバックを聴いたときに盛り上がれる音楽的な音。アーティストがのってくれば良い演奏を録音出来る。アーティストに気持ちよく演奏してもらうことは音楽制作では最も重要です。だからレコーディング・エンジニアは良い演奏を録るためにプレイバック、キューボックスの返しのサウンドにこだわるんです。

「相手が演奏したいタイミングでテレコを回せ」「俺たちは音を録っているのではなく音楽を録っているんだ」「そうすればアシスタントでも音楽制作に参加出来る」「ミュージシャンとテレコで会話しろ」と。マスタリングで、曲間決めをするとき、この言葉を思い出します。NS-10Mのサウンドを通して一流のエンジニアの心を教わりました。
※テレコ:テープレコーダー。SONY-PCM3348、STUDER-A820など。


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2011年2月7日月曜日

アンコール開催!マスタリングセミナー@サイデラ・モーニングセッション

チーフ・エンジニアの森崎です。

先日は、「秘伝マスタリングテクニック極秘公開」(1月27日Rock oN渋谷店Rock oNセミナー)に参加いただきありがとうございました。当日お配りした資料にさらにメモまでとりながら熱心に聴いていただき、セミナーを行ってよかったです。

良い作品に仕上げるためには細かなディテールの聴き比べ、それを判断するモニターシステムがいかに大切かという事が伝わったのではと思っております。Rock oNセミナーでの内容から「ラインケーブル」「ADコンバーター」にしぼって、ぼくのリファレンスである「サイデラ・マスタリング」のモニター環境で、徹底視聴、解説、質疑応答という現場必須の内容で、2月15日に「サイデラ・モーニングセッション#034」にてマスタリングセミナー・アンコール開催します!

マスタリングで大切なことはTDマスターの情報を100%引き出すことです。ケーブル、ADコンバーターの選択とは、EQ、COMPをかける前の段階。音作りの土台です。一つ一つの違いは小さなものですが、その積み重ねが最終仕上がりを大きく左右します。求めるサウンドの方向性にマッチしたケーブル/コンバーターの選択は「TDマスターの情報を100%引き出す」為に欠かせないプロセスです。色づけの無いモニターシステムでケーブル3種類、ADコンバーター3種類を徹底視聴します。「こんなにも仕上がりが左右するのか!」ということを是非体験してください。またそれらの活かし方を詳しく解説していきます。
++
サイデラ・モーニングセッション#034
テーマ:「アンコール開催!マスタリングセミナー -ラインケーブル・ADコンバーター徹底視聴-」
日時:2011.2.15 火曜日2.16水曜日 9:00AM-10:00AM**日程が変更になっております**
場所:サイデラ・マスタリング (PMC MB1 x5.1ch(最寄り駅;東京メトロ外苑前、JR原宿)
講師:森崎雅人(サイデラ・マスタリング チーフ・エンジニア)
参加申し込み:saraudon009@gmail.comまで、メールにてお名前/会社名をお知らせ下さい。
++
→PDFダウンロードLINK→→

Video streaming by Ustream



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2011年2月6日日曜日

すぐにできる音質アップの2つの方法(機材の設置 基礎編)

チーフ・エンジニアの森崎です。

「ガタ無く置く。ネジをしっかり締める。」
このふたつが機材を設置する際の基本です。
本日は振動対策の基本としてスピーカー、スピーカースタンドのガタ取りとラックマウント機器のネジの増締めについてお話しします。機材は振動対策をしっかり施すとフォーカスがハッキリし、透明感のあるサウンドを再生することができます。その基本はガタが無いようしっかり置くこと。

スピーカー、スピーカースタンドのガタ取りには名刺や単語カードが便利です。まずは手で揺らしてスピーカーとインシュレーター、スピーカースタンドと床にガタが無いか確認します。全くガタがなければ調整は不要です。少しでもガタがあれば隙間に単語カードを挟んでいきます。そのままの厚さ、二つ折り、三つ折りと隙間に合わせて調整します。水平の確認は水準器を使います。水準器はプロ用のものではなく100均のものでも十分です。

アナログEQやコンプなどのアウトボードをラックにマウントする場合は必ずワッシャーをかませてください。そうすることでしっかり固定できます。ネジはしっかり締めたつもりでも時間が経つと緩んでくるので、数ヶ月に一度は増締めをすること。さらにラックマウントのネジの材質によって出音が異なります。傾向としては鉄のネジはガッツのある芯のあるサウンド、ステンレスのネジはレンジが広く高域までキレイに伸びたサウンドです。こちらは上級編のテクニックですが僕は機材に合わせて使い分けます。機材をラックマウントではなく直置きする場合、プロ用の機材はゴム足がついてない機種もあります。そのような機材には四隅に4cm×4cm程の薄いゴムシートを敷いてしっかり置きましょう。

「ガタ無く置く。ネジをしっかり締める。」すぐにできる音質アップの二つの方法、ぜひチャレンジしてください。

PS.2月15日のサイデラ・モーニングセッション#034ではラックマウントしたADコンバーターも徹底視聴しますよ。僕が上記2点や電源などトータルでチューニングしたサウンドを聴きに来てくださいね。詳しくはこちらをご覧ください。


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