2012年2月29日水曜日

やなぎなぎ/ビードロ模様


TVアニメ「あの夏で待ってる」エンディングテーマ
「やなぎなぎ/ビードロ模様」
2012.2.29(WED)リリース!
GNCA-0236
ジェネオン・ユニバーサル・エンターテイメント
¥1260
1.ビードロ模様
作詞:やなぎなぎ / 作曲:中沢伴行(I've sound) / 編曲:中沢伴行、尾崎武士(I've sound)
2.concent
作詞・作曲:やなぎなぎ / 編曲:飛内将大(agehasprings)
3.ビードロ模様(instrumental)
4.concent(instrumental)


チーフ・エンジニアの森崎です。
2月29日発売のやなぎなぎさんのニューシングル「ビードロ模様」のマスタリングをやらせていただきました。

事前に音確認
「ビードロ模様」の参考音源(ミックスマスターをWAVES L2でマキシマイズしたもの)を事前に送っていただいたので今作のサウンドのキャラクター、音圧レベルなどを確認することができました。言葉では伝え難いニュアンスも音源があると共有しやすく、よりイメージに近いサウンドに仕上げることができます。
オリジナルのミックスマスターはヘッドルームが充分にありバランスがよく、自然な素晴らしい仕上がりでした。このような音源からのマスタリングでは、音圧をギリギリまで入れる。あるいは出来る限り奥行き・広がりを大切に。などあらゆる方向性に選択肢が拡がります。

やなぎさんのリクエスト
まず最初にやなぎさんと一緒に参考音源を聴きながらサウンドの方向性を決めます。リクエストは3つ。
「声の透明感を引き出して欲しい」
「もう少しだけ広がりが欲しい(サビでパッと広がる感じ)」
「ある程度の音圧も欲しい」

いつもならDSDデータにアップコンバートしてのマスタリング作業ですが、今作は音圧レベルが必要なことと、TVアニメ「あの夏で待ってる」のエンディングテーマということもありテレビのスピーカーでも前に張り出してくる音に仕上げるため、PCMで作業しました。

音作りの土台は機材とケーブルの選択で
テレビやラジカセなど小さなシステムでも聴感上大きく聴かせるには、音量レベルの大きさではなく楽器の輪郭がハッキリした芯のある音に仕上げることが大切です。そのために音源の送り出しに使うPro Tools用Macの電源ケーブルをアレグロケーブルに交換。こうすることでボーカル、キック、スネアなどセンター成分の楽器の音像を大きく表現することが可能になります。AD/DAコンバーターはタイトで中低域に厚みのあるPrismSound ADA-8を使用。声の透明感を引き出すためにアナログコンプのPrismSound MLA-2をスルーで通してシルキーな倍音をプラス。ADA-8からMLA-2へのアナログラインケーブルはアクロテック8Nケーブルで輪郭を強調。

各機材の入力レベルの微調整
バランス、ニュアンスの調整はEQとアナログコンプ、DAコンバーター、ADコンバーターの入力レベルの微調整で行います。アナログ段を持った機材は入力レベルでサウンドのニュアンスが微妙に変化するからです。適正レベルではフラットなまま。入力レベルを上げて機材をドライブさせるとハーモニック・ディストーションが生じ透明感、艶がプラスされます。このさじ加減で歌の質感をコントロールしました。

デジタルEQでバランスの調整
最後にt.c.electronic System 6000のEQでリズム、ボーカルの芯を強調しつつ、低域のバランスを調整します。具体的にはボーカルには320Hz、600Hz、1kHz、2.5kHz、6kHz、16kHz辺を低域は26Hz、63Hz、120Hz、180Hz辺りをコントロールしました。一つのEQで処理すると目的としている楽器以外の帯域がブースト、カットされてしまうため複数のEQで処理しています。やなぎさんはとても耳が良く、EQの音決めはとてもスムーズに行うことができました。

※あくまで僕の考えですが「周波数帯域と音の特徴」
超低域(32Hz以下)→低域のエアー感、部屋鳴り
低域(32Hz~125Hz)→低域の量感、太さ
中低域(125Hz~250Hz)→低域の厚み
中域(250Hz~1kHz)→ボリューム感
中高域(1kHz~4kHz)→高域の厚み、音の芯を出す
高域(4kHz~16kHz)→輝き、艶、透明感
超高域(16kHz以上)→高域のエアー感


マスタリング済みの音源はやなぎさんのHPでも試聴することができます。
http://yanaginagi.net/
アナログ機材とケーブルで仕上げた透明感のあるボーカル、暖かく抜けのいいトラックはぜひCDで聴いてください。特にサビでもつぶれずに伸びやかなやなぎさんのボーカルは必聴です!


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2012年2月28日火曜日

コメントへの回答:モニターケーブルの選択

モニターラインのケーブルですが、モガミの2芯の2549を3mの長さで使用しています。ただ、ハイ上がりになるのでフラットではないとよく聞くのですが、2534の方がフラットで良いのでしょうか?初期型のNS-10M(ユニット交換メンテ済み)にヤマハの業務用アンプ、スピーカーケーブルはベルデンの8460です。4S6の方が定番でしょうか?ツイーター特性の好みでいまでも初期型を使用しています。

2芯のモガミ 2549はバランスがよく歌や楽器の定位がしっかりしたケーブルだと思っています。ヤマハ NS-10Mは決してHiFiではなくどちらかというと派手でボーカルの帯域が大きく聴こえるスピーカーなのでこのシステムに導入すればハイ上がりに聴こえるかもしれません。それに対し4芯のモガミ 2534の方が音質的には柔らかくナチュラルです。ボーカルもオケに馴染み、キックのアタックは2549と比較して弱めですがレンジが広い。

音楽制作の現場ではミキシング・コンソール、プロツールスのアウト「そのままの音質」が、録音/再生されることが理想的です。もし2549でサウンドがハイ上がりと感じるなら2534のほうが相性がいいはずですので試してみてください。カナレ L-4E6Sも抜けがよくレンジの広い。ベルデン 1192Aは低域が豊かな中低域に厚みのあるケーブルです。どれも同価格帯のケーブルですからぜひ比較試聴をおすすめします。必ずお気に入りのケーブルが見つかるはずです。

サイデラ・マスタリングではモニターラインは全てSaidera Ai SD-9003ケーブルを使用しています。色づけが無く「そのままの音質」で伝送するケーブルです。モニター環境をグレードアップしたい場合には一番オススメのケーブルです。

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2012年2月27日月曜日

「沢登秀信/Live」


チーフ・エンジニアの森崎です。
シンガー・ソングライターの沢登秀信さんの「Live」という作品のマスタリングをやらせていただきました。

この作品は1990年代後半の、プラグインパワーの小さなコンデンサーマイクと、MDでのライブレコーディング。そんな録音機材ですから演奏が一番盛り上がるところでは逆に、過度なリミッティングがかかり音量が波打ってしまう。色々な方にオリジナルMDを聴いてもらって、「どうにかならないか」と言うとみなさん異口同音に「どうにもならない」と返ってくるので、一年の歳月をかけてMDからの音源をご自身でトリートメントされた渾身の作品です。

そのトリートメントの方法がまた、お話を聞いているだけで苦労が伝わってくる内容で、ドラムの層、ベースの層、、と音源を重ね、各層ごとにボリュームカーブとEQを施していったそうです。

そのようにして仕上がった音源のマスタリングをご依頼いただいたのには過去のとあるご縁がきっかけでした。沢登さんも親しいギタリスト千代正行さんの「Bouillon」というアルバムのマスタリングを僕が手がけていて、「サイデラ・マスタリングの森崎」というキーワードをずっと頭の片隅に置いていてくれていたようなのです。

「ことあるごとにこのMDを引っ張り出して聴いてみると演奏の素晴らしさが伝わって来る。なんとしても世に出したい。」
沢登さんのサウンドに込められた思いは一聴して分かりました。

沢登:音どうですか?
森崎:演奏が最高にかっこいいです!すばらしい作品になりますよ。
沢登:音が悪いって引き受けてくれないと思っていました(笑)。どうにもならないと言った連中をビックリさせたいですね!
森崎:任せて下さい!

ライブ当日の演奏の緊張感、空気感が伝わってきます。マスタリングでは最大限にそれを活かして音作りしました。耳で聴くというよりもライブを体感する、体で感じるサウンドに仕上げました。ローエンドもギターアンプやベースアンプの箱鳴りを活かすためにあえてカットしていません。曲ごとの音量レベルも、スタジオ録音作品では歌の聴こえ方で調節することが多いですが、この作品ではあえてオケでレベルを調整しています。ボーカルはバンドの一部としてとらえました。

沢登:50歳を目の前にしてようやくこの作品を完成させることができました。次回作は一発録りかな。
森崎:ブースを仕切らずにのレコーディングですか?
沢登:出来れば2chダイレクトで(笑)
森崎:次回作も楽しみにしています!

通し試聴で沢登さんから、「森崎さん、MDでは分からなかったフレーズを今日初めて聴き取ることができました!」と言って頂いた時にはうれしかったです。CD発売はもう少し先になりそうとのこと。乞うご期待です!

沢登さんオフィシャルHP[沢登ワールド]
http://www.SAWANOBORI.COM/
サワノブログ
http://blog.livedoor.jp/sawanobori_w/


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2012年2月15日水曜日

「LEO/ONE VOICE」


発売日:2012年2月15日
SAVAGE/SCM MUSIC
品番:SVG-003
タイトル「ONE VOICE」
¥2,400-(in tax)
JAN:4580351343545

チーフ・エンジニアの森崎です。

本日発売!男性R&BボーカリストLEOさんのニューアルバム「ONE VOICE」のマスタリングをやらせていただきました。LEOさんは「SUGAR SHACK FAMILY/SUGAR SHACK FACTORY」に参加されていたり、1月18日発売の最新シングル2タイトル「君がくれたもの」「あなたがそばにいること」(こちらはタワーレコード限定シングルです!)もマスタリングをやらせていただきました。そして今アルバムはLEOさんの過去の楽曲から新曲までまさに集大成、聴き応えのある作品です。皆さんぜひCDを聴いてください!

マスタリングの作業はほとんどの楽曲のミックスを担当されたエンジニアのKamata君が立ち会ってくれました。彼からのリクエストは2つ。
「前回のシングルよりもボトムのしっかりした重いビートに仕上げて欲しい」
「音の抜けはいつもの森崎さんのフィーリングが欲しい」
これは「スターリングサウンドのクリス・ゲリンジャーの低音と、トム・コインの抜けを併せ持った」サウンドです!このやりがいのあるリクエストには以下のようにチャレンジしました。

シングルでのマスタリングと同様と24ビット/48kHzのWAVファイルをPro Toolsで再生しますが、Mac本体の電源ケーブルにアレグロの電源ケーブルを使用し、Pro Tools上のプラグインSlate Digital FG-Xで微調整しあらかじめボトムがファットなサウンドを作ってからマスタリング機材を通します。シングル「君がくれたもの」では歌詞がはっきり聴こえるボーカル中心の音作りで仕上げましたが、今アルバムではボーカルとオケが一体になって前に張り出す、厚みのあるサウンドに仕上げてあります。

LEOさんの魅力はなんといってもその声です。初めてマスタリングしたとき日本人離れした倍音のある声にとても感動しました。今アルバムの収録曲には録音された年に数年の開きがあります。初期の頃の曲は明るくクリアーな声ですが、最新の曲では深みが増しより存在感のある声に変わってきています。それぞれの楽曲の歌い方のニュアンス、声質の変化をじっくり聴いてみてください。

SVG-003「LEO/ONE VOICE」
01. 君がくれたもの
02. 君におくる歌
03. どうして二人は・・・。
04. 希望の未来
05. Can you hear me?
06. IN MY LIFE
07. Moments(Interludo)
08. Flashlight
09. JUMP UP
10. I Know U Want Me
11. Dream Of Love(Part1)
12. あなたがそばにいること
13. ひとつだけ
14. NEXT STAGE feat.L&J,真之介,MICHIYA


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2012年2月10日金曜日

予告:サイデラ・モーニングセッション#48「ECLIPSE TDシリーズスピーカー 視聴会」


サイデラ・モーニングセッション#48「ECLIPSE TDシリーズスピーカー 視聴会」
日時:2012年2月14日(火)9:00-10:00AM
テーマ:Eclipse TD510ZMK2 とTD508MK3 の視聴
場所:サイデラ・マスタリング (最寄り駅;東京メトロ外苑前、JR原宿)
http://www.saidera.co.jp/paradiso/map.html
持ち物:視聴用CDまたはSACD(任意)

参加申し込み:saraudon009@gmail.comまで、メールにてお名前/会社(学校)名をお知らせください。応募多数の場合抽選となります。

ECLIPSE TDシリーズスピーカーの設計思想である「正確な再生」を追求し続けて10年目に誕生した「TD510ZMK2」。最上位モデル「TD712zMK2」と同様のスタンド一体化構造とし、インパルス応答と周波数特性の向上で「より正確な音」に近づきました。そして「TD508MK3」は、ハイコストパフォーマンスモデルです。世界初の全面「AURAL SONIC」仕様空間にこちらも生まれ変わったサイデラ・マスタリングでご視聴いただきます。

当日はみなさまがリファレンスにしているCDもお持込みください。
質疑応答に応えてくれるのは、小脇 宏氏(富士通テン株式会社)

http://www.eclipse-td.com/products/td510zmk2/index.html
http://www.eclipse-td.com/products/td508mk3/index.html
http://www.miroc.co.jp/magazine/archives/16268
http://surroundterakoya.blogspot.com/2012/01/science-of-accurate-sound.html
http://www.phileweb.com/news/d-av/201201/24/30192.html


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2012年2月9日木曜日

波形のお話


今、スタジオに写真とりにいったらいい話を聞いたのでご紹介。エンジニアの会話。
森崎「これ波形、いいんですよ。ミックス素晴らしいんです。」
兼重哲哉さん「コンプかかりすぎてるのって、こげちゃったみたいですよね。」
森崎「そうなんですよ、ミックスで(マスタリングDAWのsoundBladeをさして)こうなってると、なにもできない。」
兼重「コンプかけすぎのミックスは、こげちゃったトーストみたいですよね。もどせない。」
森崎「空気感を残したまま、ボリュームあげるのはマスタリングスタジオの機材でやった方が絶対いいんです。」
兼重「自分でもWAVES L3などでシュミレートしながらミックスをしていますが最終的には外しています」
森崎「理想のミックスとは?」
兼重「ピークメーターとVUメーターの振れ方が同じようになるのがベストだと考えています。」
森崎「(兼重さんの音源は)メーターの振れ以上に大きく聴こえます。」
兼重「キック、ボーカルなどのセンター成分の音作りには特にこだわっています。基本的にミックスはNuendoでやっているのですが、空間系はさておき、コンプなどのダイナミクスコントロールはすべてアナログ機材を通して行なっています。」


兼重 哲哉
Tetsuya Kaneshige

1979年生まれ

大学卒業後、WHITEBASE STUDIOに入社。アシスタントエンジニアとして、数多くのアーティストのセッションを経験し、2006年にはTOM・TOM STUDIO設立に参加。同スタジオのチーフエンジニアに就任。2008年6月より独立し、現在はフリーランスで活動中。

2010-2011参加作品
i-dep・NONA REEVES・SCANDAL・HALCALI・SUPER BEAVER・八十八ヶ所巡礼・and more

http://www.tetrapot.com/credit.html




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2012年1月18日水曜日

守屋純子オーケストラ「Into The Bright Decade」/5.6MHzDSDマスタリング@サイデラ・マスタリング


定価:2,520 円(税込) / 発売日:2012/1/18
品番:SOL JP-0012 / POS:4562263550525
(パーソネル) 守屋純子:ピアノ、作・編曲
Tp: エリック・ミヤシロ、木幡光邦、奥村晶、岡崎好朗
Sax: 近藤和彦、緑川英徳、小池修、アンディー・ウルフ、宮本大路
Tb: 片岡雄三、佐藤春樹、東條あづさ、山城純子
B: 納浩一、D: 大坂昌彦、Perc: 岡部洋一
(録音年月日) 2011年 9月28日&29日、サウンド・シティーAスタジオ


リミッターなし音源を5.6MHz DSDに、KORG MR-2000Sでプレイバック
森崎:音源をエンジニアの岡部潔さんより預かりました。リミッターありとなしの2種類のバージョンです。リミッターなしの方が良いですね。
守屋純子:私もね、そう思う。なしの方がいい。リミッターをかけちゃうと、エリックさんのハイノートや、大路さんの低音がちょっときれいに整い過ぎてしまう。例えばポップスとかの商品だったらそれでもいいと思うんですけど。今回はジャズファンのために(演奏の表情を重視して)仕上げたい。心配はないでしょ(笑)。
森崎:そうですね。トレードですけど、リミッターがかければ太い音の荒さが損なわれています。音がきれいに均されて。
守屋:岡部さんも(リミッティングは)マスタリングの時にやって欲しいとおっしゃっていたので、そのつもりでミックスして下さったと思います。ところでいま鳴っている音は?
森崎:これはリミッターなしのバージョン。KORG AudioGateでDSD 5.6MHzにアップコンバートしてKORGのMR-2000Sです。
守屋:ベースとかもすごく良い音していますね!
森崎:音量確認のためにリミッターありのレベルの入ったバージョンと比較してみましょう。
守屋:リミッター入った方は過度にきれいになっちゃっていますね。絶対に(リミッターなしの)こっちです!絶対にこっち!
森崎:では、これですすめましょう。


基準レベルで質感が決まる
森崎:次に音量レベルをどこまで入れるか。先ほどのプレイバックより1dB下げてみました。
佐々(スパイスオブライフ):ベースのところをもう一度聴かせて頂けますか?ベースのふくよかさなどはこちらの方がありますね。
森崎:岡部さんから、スウィングジャーナルのゴールドディスクもらえる音にして欲しい!とリクエストされているんです(一同大笑い)。レベルを下げた方が躍動感もあるし、楽器の鳴りがいいです。
守屋:岡部さんそんなところ狙っているですか?スウィングジャーナルはもうないけど(笑)。
佐々:レベル下げの方がいいですね。
森崎:ジム・アンダーソン氏が録音した前作と比較してみましょう!
守屋:音質も近いね! 
森崎:前作はおそらくPCMで再生してマスタリングしているはずです。
守屋:DSDの方が生っぽさを感じます。
森崎:DSDアップコンバートをマスタリングで使っているのは、おそらく世界でもオノと僕ぐらいです。オノがマスタリングしたVERVEのシリーズは現地にDSDレコーダーを持ち込んで6mmのオリジナルマスターをアーカイブした音源からマスタリングしました。DSDレコーダーはアナログのマスターテープのニュアンスまでそのまま録音出来るんです。
佐々:1dBの違いっていかがですか?
森崎:プラス1dB入れた方が若干ですがアナログ機材の歪み成分でガッツが出るというか、派手に聴こえますね。 
佐々:下げた方は、まとまりがあるというか、ナチュラルに聴こえますね。
森崎:音量レベルで質感が決まります。つまりマスタリング最初の1曲の音量レベルの設定はとても重要です。逆にこれが決まってしまえば他の曲は微調整でマスタリングが出来ます。もしオーディオファンの方をターゲットにするなら1dB下げです!
守屋:そうなんですか?
森崎:ジャズのリスナーの方は自分でボリュームをコントロールしてくれるので音量レベルは問題ないんです。ヘッドフォンステレオなどで聴く方をターゲットにするなら大きい方がいいです。
佐々:そうだよね。
守屋:どちらを対象にするかですね。
佐々:オーディオ専門誌でということになるとレベル下げですね。
守屋:私の音楽を聴いて下さる方はどちらかといえばオーディオファンのお客さんが多いと思います。もちろん、中高生にもぜひ買っていただきたいですが、ある程度のオーディオシステムを持っている方が多く買ってくださるかと思います。
佐々:いまCDの購買は落ちているけど、でもオーディオの人たちの購買は落ちていないんですよ。そういう方々が求めているのはいい音の作品です。
守屋:それなら音質の良いほうの1dB下げでいきましょう。 


ADコンバーターのニュアンスの違いを比較
森崎:音量はこれで決まりです。次に機材の選択。機材によっても楽器のニュアンスは若干異なります。同様に1曲目でチェックしていきます。まず、こちらが最初のセッティングです。(♪視聴)それで、こちらが別のセッティングです。(♪視聴)
守屋:最初の方が割と荒々しくて生音に近くて華やかな感じで、後の方がまとまりのあるバランスの取れた音に聴こえました。
森崎:そうですね。
守屋:その通りでしょ!どっちもいいんですけどね。
佐々:これは何の違いなんですか?
森崎:ADコンバーター、アナログの信号をデジタルに変換する機材の違いです。最初の方はPrismSound ADA-8、後のはdCS 905です。ミュージシャンが楽器を替えるようにニュアンスの違いがありますね。
守屋、佐々:あるある!
森崎:どちらが好きですか?
守屋:最初の方が生音に近い感じがしました。後の方が商品としてはまとまっていたように聴こえましたがもう一度聴いてもいいですか? 
佐々:僕は最初の方が好きでした。
森崎:僕も最初の方で行きたいと思いました。
守屋:最初の方にしましょうよ!後の方がおとなしいですよね。
森崎:岡部さんからもビッグバンドらしさを出して欲しいというリクエストがあったんです。
守屋:最初の方が生音に近い感じがありましたし今回の場合はこちらの方が良いと思いました。
森崎:最初の方が、音像が大きく聴こえました。音量の大きさではなく一つ一つの楽器の音像の大きさ、特にブラス系の楽器が豊かに響いているように聴こえました。ライブハウスの前列で聴いているような。
守屋:そっちの方が良いですね!
森崎:後の方は一番バランスの良い席で聴いているようなサウンドでした。
守屋:二階席ですね(笑)。
佐々:機材だけでこんなに音が変わるんですね!
森崎:モニタースピーカーをシビアに調整していますので、いわゆるレコーディングスタジオよりもわずかな差が正確に聴こえているんです。では最初のセッティングでもう一度聴いてみますね!
森崎:楽器の音の芯が分かりやすく、でも生音のように柔らかく聴き心地のいいサウンドです。
佐々:聴きやすいと言ったらおかしいですけど楽しいですよね!
森崎:楽器のアンサンブルがとても良い。特にブラスセクションのサウンドが素晴らしい!ジャズのトランペットの音は音作りが難しいんですよ。
守屋:サックスよりもですか?
森崎:そうです。サックスはどちらかと言えば人の声に近い帯域で丸みがあるのですが、トランペットが強く吹いた時に歪まずに大きく出すのはとても難しいのです。
*サイデラ・マスタリングでは下記のようなADCを使い分けています。
Prism Sound ADA-8 (DSD/PCM)
dB Technologies 4496 (M-DA824)
dCS 905(DSD/PCM)
Meitnerdesign DAC8 (DSD)
KORG MR-2000S (DSD)

EQで空気感の微調整
森崎:最後にEQで高域の微調整を行ないますね。こちらがAパターン、こちらがBパターンです。
守屋:Bの方がハイが出ているような気がしたのですが?
森崎:実はAの方がハイが出ているんですよ(笑)。
佐々:そうでしょ。
森崎:Bのほうが高域の空気感のある成分を抑えているので楽器の実音に近いところがよく聴こえるんです。Aの方は空気感を出すために16Hz辺りを少し足しています。もう一度聴いてみますね!こちらがAでこちらがBです。
守屋:生に近い方を優先するならAの方が良いですね!
佐々:そう思います。
森崎:Aでいきましょう!ブラスのアンサンブルもAの方がきれいに聴こえました。バッチリだと思います。

リミッターなしのマスタリング
(1曲目を聴き終えて)
守屋:いいと思います!
森崎:今回のマスタリングではリミッターはほとんどかけていません。
守屋:リミッターはいらないと私は思います。実際に皆さんの演奏の音がすごくいいので。たとえば、エリックさんはどんな高い音でも、決してキーっという音にならずあくまでもリラックスした温かい音のままですから。ぜひメンバー全員の生音の素晴らしさを存分に生かしたいと思います。

(♪2曲目のマスタリング作業に進む)
森崎:録音はどちらのスタジオですか?
守屋:サウンドシティーです。前2作品もサウンドシティーでやっているんですよ。サウンドシティーの自然な響きは、アコースティックなビッグバンドの録音には最適だと思っています。
森崎:2曲目も素晴らしいです。このままのバランスでバッチリです。音量レベルの調整だけして録音していきます。


DSDマスタリングと従来のPCMマスタリングの使い分け
(2曲目を聴き終えて)
守屋:とてもいいと思います。ソプラノの音が良くなったね。
森崎:DSDにアップコンバートして作業すると楽器のニュアンスの調整がとてもし易いんです。
守屋:DSDはそんなに新しい技術なんですか?
森崎:技術自体は決して新しいものではないのですが、これだけ身近に扱えるようになったのはここ数年のことです。特に今回のマスタリングで使用しているKORG MR-2000Sが出たのは2008年でで、それまでのDSDシステムに比べて性能が良いだけでなく、コンパクトになり大幅に使いやすくなりました。 
守屋:それではまだDSDを使用してマスタリングした音楽はそれほど多くはないのですか?
森崎:僕は沢山の作品で使用していますが(笑)、ジャズやクラッシックのジャンルでは増えていえるとはいえ多くはないです。
守屋:それではDSDマスタリングで行なったということをうたわないといけないですね!DSDマスタリングというだけでも手にしてくれるオーディオファンの方は絶対にいますね!
森崎:DSDは生音に限りなく近いサウンドです。
佐々:最近はその方向に戻っているよね。
森崎:例えばこのトランペットの質感はPCMのマスタリングでは絶対に出せないサウンドでした。
佐々:本当にそう思います。
森崎:アナログテープレコーダーにもヒスノイズがありますから、演奏の息づかいなど、ここまで細かく表現することは出来ません。
佐々:非常に柔らかいし、滑らかですね。
守屋:ソプラノの音もきれいで太い音になっています。アップコンバートせずにPCMのままでマスタリングすることもあるのですか?
森崎:音量レベルをギリギリまで大きく仕上げる必要があるJ-POPなどのジャンルではPCMのまま仕上げることもあります。ミックスの段階でレベルを大きく作り込んである音源が多いので、その方向性のままPCMでマスタリングしています。アーティストやプロデューサーから「ミックスの段階よりもさらにニュアンスや空気感が欲しい」とリクエストがあれば迷わずDSDにアップコンバートしてからマスタリングします。

ベースのバランスについて
守屋:ベースのバランスに注意して欲しいと岡部さんから言われている曲がこの4曲目なんです。私はそうは思わないんですけど注意して聴いて欲しいと。音量の問題ではなくちょっと他の曲に比べてもこっとしているように聴こえます。
森崎:低域をほんの少しだけ補正しましょう。こちらがマスタリング前。そしてこちらがマスタリング後です。
守屋:ベースがタイトになりましたね。この曲って浅草ジャズコンテスト30周年で依頼されて書いた曲なんです。最初小さなスタジオでクインテットで録音したんですけど、浅草公会堂とか大きな会場で流れているのを聴いてこれはビックバンドの方がいいなって思ったんです。今後はこの曲が(浅草ジャズコンテストで)ずっとかかるので大きな会場でかかったときのベースの聴こえかたは重要です。



10年以上に亘って培われた質の高いアンサンブル
日本を代表する実力派ミュージシャン達の魅力溢れるソロ
そして守屋純子の作・編曲も冴えわたる待望の新作遂に発売!

守屋純子オーケストラ3年ぶりとなる待望の新作が発売される。2001年に発表した”シフティング・イメージ”から通算4枚目(守屋純子リーダー作品としては通算7作目)となる本作は、大きなメンバー変更も無く10年以上に亘って培われたアンサンブル、チームワークの良さと、メンバーそれぞれが日本を代表するプレイヤーとして活躍するファーストコール・ミュージシャンとしての魅力も凝縮された聴きごたえのある作品となっている。
タイトル曲の「イントゥ・ザ・ブライト・デケイド」は守屋純子オーケストラ10周年記念コンサートで発表された楽曲。更なる輝かしい10年に向けてという守屋純子の熱い情熱と信念が込められた作品。今回収められた10曲全てが守屋純子オーケストラのこれからを示唆する意欲的な作品ばかりとなっている。また、今回パーカッションに岡部洋一が加わり、いっそうドライブするリズムも楽しめる作品となった。
なおCD発売を記念して2月24日には守屋純子オーケストラ定期公演「Art in Motion」が渋谷区文化総合センター大和田さくらホールにて開催される。

(守屋純子ライナーノーツ抜粋)
わたしは、ジャズに限らず、音楽で最も大事なことは、<メロディーの美しさ>だと思っています。そして今作は、今までと比べても、<美しく親しみ易いメロディー>が何よりも大切、ということを特に意識しています。それは、たとえば、<It Don’t Mean A Thing><The Sidewinder><Sing Your Song>などを、ヴォーカリストの方々との共演がきっかけとなって作・編曲していることとも無関係ではないと思います。
リズム面では、何よりも、<スイング>がジャズの命だと思います。今回は、かねてより念願だった、パーカッションの岡部洋一さんに加わっていただいたことによって、より強力なスイング感・グルーブ感を獲得できたと思っています。
また、今回は3月の震災後の録音ということもあり、自然と、<日本>を意識したテーマの曲も多くなっています。浅草ジャズコンテスト30周年記念委嘱曲<Walking Down The Nakamise Street>や長谷川等伯の障壁画をテーマにした<Maple>、震災復興を願って書いた<Forever Peace>などです。
ジャズは時代・地域と共に移り変わる<生きている音楽>です。特にビッグバンドは、世界共通のフォーマットなので、今までに、わたしの作品を日本のみならず、アメリカ・フランスのビッグバンドに演奏していただく機会もありました。
世界中に良いビッグバンドはたくさんありますが、現代の日本のジャズ・アンサンブルのあり方として共感して聴いていただければ、そして、このCDの中からも、多くの社会人・学生ビッグバンドの皆様に演奏していただければ、嬉しい限りです。

(曲目順)
01.イントゥ・ザ・ブライト・デケイド/ Into The Bright Decade (Junko Moriya)
02.メイプル/ Maple (Junko Moriya)
03.フォー・ダニエル/ For Daniel (Junko Moriya)
04.ウォーキング・ダウン・ザ・ナカミセ・ストリート/ Walking Down The Nakamise Street (Junko Moriya)
05.フォーエヴァー・ピース/ Forever Peace (Junko Moriya)
06.ダンス・ア・ダンス/ Dance A Dance (Junko Moriya)
07.ザ・サイドワインダー/ The Sidewinder (Lee Morgan)
08.星影のステラ/ Stella By Starlight (Victor Young/Ned Washington)
09.シング・ユア・ソング/ Sing Your Song (Junko Moriya)
10.スイングしなけりゃ意味ないね/It Don’t Mean A Thing (Duke Ellington/Irving Mills)






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