2013年4月17日水曜日

理想の写真を撮るために

こんにちは。ライブレコーディング・エンジニアの西沢です。

録音の世界には、「ワンポイント」か「マルチ・マイク」かという論争があります。論争は言い過ぎですけれど、つまりはどちらの方法が良いのか、ということです。「ワンポイント」というのは、演奏空間のとある場所に1基のマイクロフォンを設置する方法。「マルチ・マイク」は、全体を捉えるメイン・マイクロフォンの他、例えば各楽器にマイクロフォンを設置し、それらをミックスします。

…でもこれは制作側のお話。リスナーにとっては、どうでもいいことですよね。私も、「結果よければどっちでもOK!」と思ってます。大切なのはマイクロフォンが多いか少ないかではなく、「音楽のバランス」と「音響のバランス」の両立にあるのです。

一般的に「ワンポイント」はマイクロフォンが少ない分、音の濁りも少なく、音響バランスに優れていると言われます。しかし、優れた音楽バランスを得るためには、ここぞという場所にマイクロフォンを設置しなければなりません。ともすると私は、「すみません、頭上にマイクを置かせてください」などとS席に座っているお客様にお願いしなくては…。ライブでは、なかなかこうは行きませんよね。

“ここぞという場所” は非常に限定されます。「ワンポイント」の難しさ(そして面白さ)は、例えばこんな写真が撮影できるポイントを演奏会場の中から探し出すことにも似ています。



「マルチ・マイク」は、マイクロフォンの本数が増えすぎると音も濁り扱いが難しいのですが、ある程度の本数ならば音楽のバランスを整えるのにとても有効な手段です。ダイヤモンド富士の写真で説明するならば、レンズを交換して理想の画角を追求したり、マイクロフォンの特性を利用して雲を目立たなくしたりできるのが「マルチ・マイク」ですね。

サイデラ・レコードのDSDライブレコーディングは、2chダイレクトから8ch、16ch、それ以上にも対応します。


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2013年4月16日火曜日

スタジオの電源入れ


チーフエンジニアの森崎です。本日はスタジオの電源入れについて。

僕は20年ほど前に銀座の老舗スタジオ、音響ハウスでキャリアをスタートしました。実はこの時はマスタリングではなくレコーディングセクションに配属されていたんですよ。そこで最初に覚えた仕事が電源入れです。音響ハウスにはリズム録りができる1スタ、2スタ、ダビングやTD用の3スタ、6スタがありました。新人は朝の9時前に出社して9:30頃までに全スタジオの電源を入れなければならないのでスピードと正確さが必要です。

電源入れのポイントは3つ。
1.信号の流れる順番に
2.動線に沿って手際よく
3.確実に

スタジオに着いたら作業伝票を見てそれぞれのスタジオでどんなセッションが行なわれるのか(リズム録り、TD、ダビングなど)を確認します。それから一番最初にセッションがスタートするスタジオから電源を入れていきます。電源は機材の信号の流れに従い入れていきます。一筆書きのような美しい動線で入れていかないと先輩に怒られました。一番最初に主幹という大元の電源を入れます。音響ハウスは100Vと117Vの2つに分かれていました。この時プロテクション・スイッチ(過大入力があった時に動作するブレーカーのようなスイッチ)が押されているかを確認する。それからテープ・レコーダーの電源を入れます。僕がスタジオに入りたての頃はPro Toolsはなく、使用していたのはSONY PCM-3348(48chのデジタル・マルチトラックレコーダー)とSTUDER A820(24chのアナログ・マルチトラックレコーダー)です。トラックダウンが行なわれるスタジオでは 2ch仕様の STUDER A820の電源も入れます。同時にコピー用のカセットデッキ、MDデッキ、DATの電源も入れていきます。次にミキシングコンソールの電源を入れ、最後にパワーアンプの電源を入れます。当時の音響ハウスのミキシングコンソールは全てSSL製で、1スタが9000J、2スタ3スタが4000G、6スタが4000G+でした。ミキシングコンソールは本体とコンピューター用の2つの電源に分かれていました。パワーアンプはラージモニター用とスモールモニター用の2種類ありました。特にラージモニターはマルチアンプドライブ(ウーハー、スコーカー、ツイーターを別々のアンプで駆動する)だったので複数台のアンプの電源を入れないといけません。

片手にハンディーモップを持ち掃除しながら電源を入れるのが音響ハウス流です。電源を入れながらテープ・レコーダーのロケーターや機材のパネル面、ミキシングコンソールのモジュールの埃をはらいます。コンソールの掃除は特に注意が必要でパッチ盤の穴に埃が入らないようにパッチ盤のある方からない方に向かって埃をはらっていきます。埃をはらいながらつまみを定位置に戻して、最後に回線確認を行います。オシレーターから信号を出してLRのスピーカーから音が出ているか、接続の間違いがないか確認をして終了です。もし音が出なかった場合はまず予備のスピーカーと交換。それ以外の不具合があればメンテナンス・エンジニアに報告して作業前に修理をします。机の引き出しを見て備品を補充したり鉛筆を削るのも電源入れの時に行ないました。

新人の頃は流れ作業で入れていた電源も2年目、3年目となると仕事の先読みが出きるようになります。セッションの内容、エンジニアやアシスタントの癖によって必要な機材やマイクを運んだりプラスアルファの準備ができるようになります。「Aさんはこのマイクを使うので運んでおこう」とか、「1スタはストリングスのダビングが有るから方耳のイヤホンと鉛筆が多めに必要かな」など。しかし大変だったことは新人が入ってくるまでは一番下のアシスタントが電源を入れなければいけないことでした。朝までのセッションでも9時には電源を入れなければいけないので寝る時間は3時間を切ることもありましたが、やっと任された仕事だと思って頑張りましたね。

レコーディング・スタジオに入社した新人の皆さんはこれからまずは一人で電源入れを任されると思いますがぜひこの3つのポイントを頭に入れて頑張ってください!


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2013年4月15日月曜日

DSD Field Recording:MUSHのDSD録音記(その4)「岩手県陸前高田市のしずかな波」


どうもMushです!

これはDSD録音ではないんですが、もう3年も前になりましたが、岩手県陸前高田市の海岸で録音した波の音です。天候は雨がぱらつく直前で波も少し荒れ模様だったのですが、波音は妙に落ち着く静かな印象がありました。後方に防砂林があって、サラウンドで聴くと波音が反射しているのがわかるんですよ。


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2013年4月12日金曜日

ある日のマスタリング風景(その1)「イントロダクション」


チーフエンジニアの森崎です。このところ、個人で音源制作をしている方などからミックスのこと、モニター環境のことなどの相談を受けながらマスタリングすることがとても多くなりました。マスタリングスタジオを身近に感じてもらえているのだと思うといいことだと思います。今回から、先日はじめてマスタリングでご一緒したとあるアーティストさん(Aさんとしておきます!)との、マスタリング中のやり取りとプライベートスタジオの改善策などを何度かに分けてまとめていきます。

<まずは音源の確認から>
Aさん:はじめまして!本日はよろしくお願いします。
森崎:はじめまして!こちらこそ楽しみにしていました。

Aさん:今日は僕の音源について色々アドバイスしてもらえたらと思っています。自宅の作業環境についても改善すべきところがあればお願いします。
森崎:了解しました。自宅スタジオの音を手軽に改善する方法がいくつか有りますので後で詳しく説明します。それでは早速ですが音源を聴いてみましょう!

Aさん :こちらのオーディオファイルになります。アンビエント系の曲を作っています。オーディオI/Oは何を使用していますか?
森崎:ミックス音源再生用はAVID Pro Tools 10とRME HDSeP AESというPCI-Expressでマウントするタイプのインターフェースを組み合わせて、そのAESアウトをPrism Sound
ADA-8でDAしています。

Aさん:Prism Soundの音はとても興味があります。
森崎:それは良かったです!僕はPrism Soundが大好きで特にDAコンバーターは必ず試しています。後で他にも色々な機材やケーブルの音の違いを聴き比べてみますね。こちらがPro Toolsから再生したオリジナルのミックス音源です。

Aさん:こんなに色々な音がクリアに聴こえるんですね!音の広がりはいかがですか?
森崎:音の広がりは十分にあります!シンセの重なりを聴こえやすくしたらもっと良くなりますよ!

Aさん:そこなんですよ!自宅のDAWだけの環境で作業していると奥行きを再現するのがとても難しいんです。この音のうねりをもっと表現できたら感情的な盛り上がりが全く違ってくると思うんです。
森崎:リスナーへの音楽の伝わり方が変わりますよね。奥行きや空気感を出すにはいくつか方法があります。こちらは実際にマスタリングの機材を通しながら聴き比べをしていきましょう。マスタリングでは音源の情報を最大限に引き出すことが重要ですが、それにはまず音源を隅々まで客観的に確認する必要があります。そのためにシビアに視聴できるモニター環境を整えることもとても大事なんですよ。

(その2)につづく...


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2013年4月11日木曜日

Q&A(その3)ミックスは何に落とせば(ミックスダウンすれば)いいでしょう?素材の特徴や注意点など教えて下さい。


1.DSDレコーダー KORG MR-2000S
2013年現在、入手できる最高音質のマスターレコーダーです。「何にレコーディングしますか?」「何にミキシングしますか?」という問いには迷うことなく推奨します。DSD 5.6MHz/2.8MHz。コンソールのアウトを素直にそのまま録音できるのがいちばんの魅力だと思います。

2.アナログテープ(1/4インチ、ハーフインチ)
音像が大きく、パワー感が必要な場合、他のメディアに比べアナログが有利です。スピードと切れ、艶、暖かみ。太さと透明感を兼ね備えたサウンドは、ポップスやロック、R&Bなどでは、最高のメディアであることは間違いありません。
※100Hz/1kHz/10kHzのリファレンストーンは必ず録音してください。できれば15kHz、50Hzも録音してください。

3.オーディオデータ(WAV/AIFF)
Pro Tools他DAWで作業が完結する場合、24ビット/44.1kHzまたは48kHz以上のデータ。低音の処理のことを考えると16ビットより24ビットを奨めます。16ビットではキックの音、ベースの音が若干硬めになります。24ビットでは特にR&Bなどで聴かれる柔らかく伸びのある低域などは、よりイメージに近いサウンド作りができます。    
※88.2kHz、96kHz以上のハイサンプリングのマスターは、レンジは広いですがその分高域のピークの成分が多いため、音量がどうしても必要という方は24ビット/44.1kHzまたは48kHzを推薦します。

4.DAT
最近ではめっきり数が減ってしまいました。SSL、NEVEの卓やアウトボードを使用してミックスする場合、DAWのバウンスデータとは違った、まとまりと芯のあるDAT特有のサウンドになります。 
※必ずリファレンストーンを録音してください。DATの場合テープ頭はエラーが多いのでプログラムの録音はABS2:00から。そしてテープエラーのことを考え、必ずバックアップのサブマスターを作成してください。
ABS0:00からABS1:00までRECミュート
ABS1:00~ABS1:30までリファレンストーン(1kHz)
ABS1:30~ABS2:00までRECミュート
ABS2:00~プログラムスタート

※※リファレンストーンが必要な理由は
録音時と再生時にリファレンストーンを元に調整を行わないと、録音された音楽を正しく再生することができません。またサウンド面では、LRのレベルをきちんと調整することでボーカル、キック、スネアなどセンター成分の定位がきちんと決まります。


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2013年4月10日水曜日

どう? すばらしい でしょう?

はじめまして!ライブレコーディング・エンジニアの西沢です。

10年ほど前にサイデラのインターンを経験、音響ハウスを経て今は室内楽やオーケストラ等のホール録音を主に手がけています。今期よりサイデラ・レコードのライブレコーディング主戦力として所属しましたので、どうぞよろしくお願いします!

サイデラは、マスタリングスタジオなのに、どうしてレコーディング・エンジニアの私が記事を書いているのでしょうか?

それは、暇だからです。

冗談です。

サイデラは、1999年からDSDレコーディングを行なっているんです!↓↓↓ ホームページにも、ちゃんと書いてありますよ ↓↓↓


私のライブレコーディングの原点は、所属していた吹奏楽部の演奏を録音したことにあります。それを部員に配ったりすると、みんな喜んでくれたわけです。...今もやっていることは、そんなに変わりません。

いい音楽を最高の状態でお届けしたい!それにはやっぱり、DSDレコーディング。

D どう?
S すばらしい
D でしょう?

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2013年4月9日火曜日

アナログ・テープの時代(その1)「テープのトランスポート」


チーフエンジニアの森崎です。

ここ数日、20年以上前のアナログテープからリマスタリングの作業を行っています。厚み、艶のあるサウンドはやっぱり素晴らしいですがそれ以上に感動するのはミュージシャンやエンジニアがサウンドに込めた「限られたテイクの中で最高のものを残す」という気迫が伝わってくること。今は何テイクも何チャンネルも無限に録れる時代ですが、当時のエンジニアの意識を忘れてはいけません。

僕が音響ハウスで仕事をしていた当時はリズム録りなど、特にバンドの録音では24chのアナログ・マルチテープレコーダーが使われていました。2インチのアナログマルチはテープ自体の重さがなんと約5キロ。それを76cm/sのテープスピードで回すとたった15分しか録音できません。さらに再生時のテープ調整のためのリファレンス・トーン(1kHz、10kHz、100Hz)をそれぞれ30秒ずつ録音すると収録時間は正味13分ちょっとです。リズム録りのセッションでは1本のテープに2テイクずつ録音していくことが主流でした(1テイクOKというのもたまにありましたが)。つまりアルバム10曲のレコーディングではアナログテープは10本前後必要になるんです。アシスタント・エンジニアは総重量50キロにもなるテープたちを台車でリズム録りのスタジオからトラックダウンするスタジオに運びました。

トラックダウンもJ-POPやロックなどは2chのアナログ・ハーフインチテープに録音していきます。1本に2テイク、歌入り、インストを録っていきます。テープ節約のためにインストはDATのテープに録って、なんてこともありました。

いよいよトラックダウンが終了してテープのピックアップの時、A&Rは大仕事です。2インチ・アナログマルチ10本と、ハーフインチ・アナログテープの大移動です!台車でスタジオのロビーまで下ろしてそこから車やタクシー移動。どうしても電車に乗る必要がある時や海外でマスタリングする場合には磁気に触れないようにテープ一本ずつアルミホイルで巻いて梱包しました。

ポケットにUSBメモリを入れてマスタリング・スタジオに向かうなんて当時は全く考えられないことでした。ただ時代は変わってもマスターテープ(データ)の重要性は変わりません。これからもみなさんがマスターに込めた気迫に応えるマスタリングをしていきたいですね。


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